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ご挨拶

救急医療は「セーフティー・ネット」の一部

佐々木 淳一
佐々木 淳一
慶應義塾大学病院 救急科
教授・診療部長

救急医療は、安全な社会生活を守るために欠かせない「セーフティー・ネット」の一部です。

救急科は救急医療に関する病院の窓口であり、救急車で搬送されるすべての患者さんの診療を担当します。救急外来には24時間体制で救急科専門医が常駐し、重症度や年齢に関わらず、病気や外傷・熱傷・中毒などまで幅広く救命医療を含めて診療を行える体制が整えられています。

診療の結果、各診療科の専門治療が必要な場合には、迅速に各診療科の医師と協力して治療を行います。入院を必要とする場合には、救急科を含め、病気の種類に応じた専門治療を考慮した適切な診療科に入院します。自力で救急外来を受診した患者さんには、看護師がトリアージを行い、各診療科の医師が中心になり対応します。

また、当院は東京都災害拠点病院の一つに指定され、日本DMAT(Disaster Medical Assistance Team: 災害派遣医療チーム)指定医療機関にもなっています。

2021年挨拶

慶應救急医学のニューノーマルを構築する

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応で,多くの方々が尽力されておられることと拝察申し上げます.長きにわたり各施設,あるいは行政機関等で,新型コロナウイルス感染症対策の中心となりご尽力されている皆様に心より敬意を表します.

今日,救急医学の専門性が認識され,救急科が標榜科として定着する時代になりました.一方で,国民は救急医療の更なる整備に期待を寄せ,先進国にふさわしい救急医療ネットワーク構築が求められています.そのような中で,COVID-19のパンデミックにより世界情勢は一変しました.救急医療の現場に携わる者も,一丸となってwith Coronaを乗り越え,after Coronaのニューノーマル(新常態)を構築していくべきです.我々の大きな目標は,まず以下の2つと考えます.

  1. 救急科専門医養成の充実
    〜世界を先導する総合力を兼ね備えたAcademic Emergency Physicianを育成する〜

    安全な社会生活を守るために必要不可欠なセーフティー・ネットの一部である救急医療を,ビジネスではなくサービスとして社会に深く根付かせ,質の高い医療を提供できるprofessionalな人材育成システムを構築すること,すなわち一人でも多くの救急科専門医,すなわち世界を先導する総合力を兼ね備えたAcademic Emergency Physicianの養成を行うことが,当教室の最重要の使命であると考えております.もちろん,充実した研究および教育環境を提供できるように,教室スタッフも日々努力を続けております.

  2. 救急医の真の働き方改革を目指す

    とりわけ劣悪な労働環境であるとされている救急医療現場における労働環境に対しては,実効性のある改善策が必要です.「働く人」を主役に「働く環境」を創造すべきであり,現状を定量化して的確に改善していかねばなりません.どのような時間の使い方をし,働く環境をどのように感じ,組織がどう機能していると考えているかなど,「時間,空間,人間」という3つの座標軸で考えていくべきです.一方で,昨年のwith Coronaの状況になり一気に環境が変わったと考えます.もちろん,流行状況のクリティカルな時期には,全く余裕がありませんでした.withからafterに向けての,いわゆる”凪”の時期においては,COVID-19は実際の行動に移す大きな契機となっており,まさに働き方改革という「黒船」がわかりやすい形でやってきて,我々が変わらずに突き進んでいくとこのまま滅んでしまうことを見せつけているかのようです.2020年上半期にベストセラーとなった「Fact Fullness」(ハンス・ロスリング著)の中には,”事実を見て,正しく恐れ,正しく希望を持とう!”という一節があります.ニューノーマルになっても,変わらないもの,失ってはならないもの,大切にしてゆかねばならないものを,自分の中で,仲間や組織の中で,見つけて欲しいと思います.after Coronaの時期においては,人間同士のつながりが個人を支えることになると思います.

平成と共に歩んで参り,2019年に創設30年という一つの節目を迎えました救急医学教室ですが,昨年の2020年は新型コロナウイルス感染症パンデミック対応に明け暮れる試練の年になり,その状況は2021年になっても厳しい状況は続いています.

2021年こそ,『一陽来復』,コロナ禍による環境の激変を奇貨として気持ちを切り替え,必ず明るい未来が我々を待っていると信じて日々を過ごしていきたいものです.2021年夏は「東京2020+1」としてニューノーマルな形で熱いものとなり,我々もその渦中で重要な役割を果たすことになります.これまでも,我々には「Resilience」,すなわち「変化する状況や予期せぬ出来事に対して、柔軟かつ上手に適応し、影響を低減し、迅速に回復する力」が必要な時期であることを強調して,教室運営を進めて参りました。今後も教室員一丸となって診療・教育・研究に邁進していく所存です.

本年もよろしくご指導賜りますよう,重ねてお願い申し上げます.

 

最後に,本年5月に第35回日本Shock学会総会を当教室主催でWeb開催致します.テーマは,『ショック研究,その先へ 〜ニューノーマル時代を牽引する若手研究者のために〜』となっております.教室員一同で実りある総会開催に向けて準備を進めておりますので,多数の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます.

 

2021年(令和3年)1月
慶應義塾大学医学部救急医学
佐々木 淳一

これからの救急医に必要な
“3つのC + R”

救急医はよく「医の原点」と呼ばれていますが、その歴史は世代ごとに進化してきました。

昭和40年代頃、いわゆる交通戦争と呼ばれる車による事故が多発した社会で、外傷外科に特化した重症患者の診療にあたったのが「第1世代」。次いで、北米型ERの導入をきっかけとして、軽症も含めた1次~3次救急のすべてを診察するようになった「第2世代」。

さらに、従来のER型救急診療を基本としながらも、来院前のプレホスピタルから救急外来、集中治療室での重症患者の治療まで一貫して引き受けているのが我々「第3世代」ということなります。

そして現代、日本中のあらゆる病院に「救急科」が設置されて来ていることでも分かるように、外科や内科とともに救急医学の専門性が社会でも認知をされてきました。

これからの救急医療を担う第4世代には、幅広い社会のニーズへ対応しながら、いかに「セーフティー・ネット」になりえるか、が強く求められてくると思います。

そのために当科では、未来を見据えたプロフェッショナルな人材を育成するため「3つのC + R」というスローガンを掲げています。

  1. Cooperation 協働
    救急現場ではチームで活動することが特に重要です。刻一刻と変化する状況の把握、他科との連携など、「協働」こそ救急医療の根幹を成すものです。
  2. Challenge 挑戦
    従来のやり方に留まらず、新しい方法や新しい道を模索し、創造していくべきと考えます。常に社会の先導者という意識で「挑戦」し続けることです。
  3. Contribution 貢献
    これからの救急医療はいかに社会のセーフティーネットとなりえるかが鍵となります。社会ニーズに応え、「貢献」出来る医師こそ我々の理想です。

  • Resilience 回復力
    今後は予測不可能な事態に遭遇することも予想されます。我々には変化する状況や予期せぬ出来事に対して、柔軟かつ上手に適応し、影響を低減し、迅速に回復する力が必要です。

《当科の紹介映像をご覧ください》

公開日:2018年5月27日