救急医療は「セーフティー・ネット」の一部
救急医療は、安全な社会生活を守るために欠かせない「セーフティー・ネット」の一部です。
救急科は救急医療に関する病院の窓口であり、救急車で搬送されるすべての患者さんの診療を担当します。救急外来には24時間体制で救急科専門医が常駐し、重症度や年齢に関わらず、病気や外傷・熱傷・中毒などまで幅広く救命医療を含めて診療を行える体制が整えられています。
診療の結果、各診療科の専門治療が必要な場合には、迅速に各診療科の医師と協力して治療を行います。入院を必要とする場合には、救急科を含め、病気の種類に応じた専門治療を考慮した適切な診療科に入院します。自力で救急外来を受診した患者さんには、看護師がトリアージを行い、各診療科の医師が中心になり対応します。
また、当院は東京都災害拠点病院の一つに指定され、日本DMAT(Disaster Medical Assistance Team: 災害派遣医療チーム)指定医療機関にもなっています。
2025年新年挨拶
救急医療の現場もポストコロナの状況になりつつあります。当科が主診療科として入院対応する対象は、外傷、熱傷、急性腹症、皮膚軟部組織感染症、急性中毒、心肺停止蘇生後、環境障害、敗血症性ショックといった重症患者、さらには他診療科からの依頼のあった集中治療が必要な傷病全般へ拡大して対応しています。本年も救命対応の患者、HCU/ICUへの入院を要する重症患者と緊急手術・内視鏡・IVRといった高度専門処置が必要な患者の受け入れ増加に努め、病院の高度急性期機能の復興・充実の中心的役割を担うべく、また医学生・臨床研修医のみならず、救急・集中治療に携わる専攻医や救急隊員などに対する魅力的な学びの場を提供できるよう取り組んで参ります。
昨年、救急医学・医療の現場を担当する部門として、社会のセーフティーネットの中心的役割を果たせるよう、不確実でどうにもできない状況であるVUCA[ブーカ;Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字]の時代を生き抜き、その先の時代を先導していけるよう教室員一丸となって診療・教育・研究に邁進していきたいと挨拶いたしました。2025年を迎え、不確実性(uncertainty)という霧につつまれた状況は、むしろ悪くなっていると言わざるを得ません。
本年は、救急・集中治療の現場に身を置くアカデミアの一員として、我々の存在意義をあらためて見つめ直し、慶應救急が社会に対して誇れるものが何であるかをしっかり考えていき、それが社会からもしっかり認められるように、教室員一同で取り組んで参ります。本年も宜しくお願い申し上げます。
2025年(令和7年)1月
慶應義塾大学医学部救急医学
佐々木 淳一
これからの救急医に必要な
“3つのC + R”
救急医はよく「医の原点」と呼ばれていますが、その歴史は世代ごとに進化してきました。
昭和40年代頃、いわゆる交通戦争と呼ばれる車による事故が多発した社会で、外傷外科に特化した重症患者の診療にあたったのが「第1世代」。次いで、北米型ERの導入をきっかけとして、軽症も含めた1次~3次救急のすべてを診察するようになった「第2世代」。
さらに、従来のER型救急診療を基本としながらも、来院前のプレホスピタルから救急外来、集中治療室での重症患者の治療まで一貫して引き受けているのが我々「第3世代」ということなります。
そして現代、日本中のあらゆる病院に「救急科」が設置されて来ていることでも分かるように、外科や内科とともに救急医学の専門性が社会でも認知をされてきました。
これからの救急医療を担う第4世代には、幅広い社会のニーズへ対応しながら、いかに「セーフティー・ネット」になりえるか、が強く求められてくると思います。
そのために当科では、未来を見据えたプロフェッショナルな人材を育成するため「3つのC + R」というスローガンを掲げています。
- Cooperation 協働
救急現場ではチームで活動することが特に重要です。刻一刻と変化する状況の把握、他科との連携など、「協働」こそ救急医療の根幹を成すものです。 - Challenge 挑戦
従来のやり方に留まらず、新しい方法や新しい道を模索し、創造していくべきと考えます。常に社会の先導者という意識で「挑戦」し続けることです。 - Contribution 貢献
これからの救急医療はいかに社会のセーフティーネットとなりえるかが鍵となります。社会ニーズに応え、「貢献」出来る医師こそ我々の理想です。
+
- Resilience 回復力
今後は予測不可能な事態に遭遇することも予想されます。我々には変化する状況や予期せぬ出来事に対して、柔軟かつ上手に適応し、影響を低減し、迅速に回復する力が必要です。
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